鬼だったり

「鬼ごっこやろうぜ!」
「おー! いいね!」
 閑散とした公園に二人の少年がいた。夕暮れのジャングルジムが二人を見ていた。
「じゃあ俺が鬼!」
「え…あー!」
 鬼宣言をされたツキグチは、焦って走り出す。鬼となった少年は興奮しながら
追いかける。しかし、ツキグチは風のように速かった。しかし、公園の近くの道
路で走っていた車の方が速かった。現代の文明を見て、同じ年齢のガキの実力を
知った。知ったところで鬼とツキグチの差は縮まらない。背中はどんどんと小さ
くなっていった。

 晩御飯を済ませたツキグチは自分の部屋のベッドに座っていた。彼は鬼ごっこ
の熱い気持ちを月に照らしていた。掛け布団で温まりながらも月を睨んでいたの
だ。月に鬼の笑顔が写った気がした。

 ツキグチは緊張しながら校門を抜けた。なぜなら鬼ごっこは終わっていないか
らだ。教室に入ったところで鬼が迫ってきた。
「おい! ツキグチ! 今日の給食、うどんだってよ!」
 赤い顔で言ってきたのだ。
 授業中、鬼はそわそわしていた。
 給食の時間中、鬼のように麺をすすっていた。鬼のように。